当店の母体は内装工事屋です。
びっくりしました?よく驚かれるんですが、落ち着いて考えてもみてください、いきなり思いつきで壁紙なんて売りませんよ。
内装工事に精通していて、しっかりとした知識や技術があるからこそ壁紙を売っているのです。
ですので、当店でも内装工事を請け負うことはもちろんあります。今日はそんなお話。
タルト不動産/タルトデザインさんのプロジェクト「白とグレーの部屋」で下請けとして内装工事を担当した時のお話です。
賃貸なのにセミオーダー??
セミーオーダー賃貸。あまり聞きなれない言葉です。
それもそのはずこんな仕組みでやる不動産屋さんはほぼ皆無です。
なぜならめちゃくちゃ手間が掛かるから。
通常の賃貸住宅の流れはざっくりこうです。
退去→原状回復工事→募集→内覧→入居
セミオーダー賃貸の場合はざっくりこう。
退去→オーナーさんと交渉→入居者募集→内覧→打合せ(数回)→内装工事→入居
ざっくり書いただけでも面倒くさそうでしょ?圧倒的に手間がかかる。
だから普通の不動産屋さんはやりたがらないんです。
でも住む人の立場で考えるとどっちが良いかは一目瞭然。
同じ費用かけて気に入らない(気にも止まらない)デザインの部屋に住むか、決まった予算の中で希望を最大限叶えてもらった部屋に住むか。
手間が掛かるけどそんなのおかまい無しに入居者さんの満足を追求するタルトさんの取り組みに「岡山の住まいをもっと面白く」を掲げる我々が協力しないわけがない。
現地が近かったこともあり入居者さんとの打ち合わせに当店を利用していただき、壁の色、床の色など決めていきました。
壁紙屋だけど壁紙を剥がす仕事
今回当店の仕事は「壁紙を剥がしてコンクリート剥き出しにする・部分的に壁紙を貼る・和室を洋室にする・床を貼る」おおまかにこの4つ。
壁紙を剥がして終わり(仕上げ)と言うのはこの仕事10年以上やってますが実は初めて。
めちゃめちゃビビってましたね。
剥がれなかったらどうしよう。職人さんを派遣できるのは予算的に3日。剥がれなければ自分で剥がすか赤字になるか。
追い込まれすぎて買っちゃいました。
ケルヒャー・スチームクリーナー(+壁紙剥がし用先端パーツ)
これ家庭用の家電ですからね。さすがDIY大国ドイツ。
先っぽから高温の蒸気が出て裏紙と糊をふやかして剥がす代物です。
これで作業もはかどるはず!
予想通り現地は何度もクロスの張替えをしていたので裏紙が3重になっていました。
こんな感じでもりもり剥がしていきます。
まぁはがれるんですがこんなチマチマやってられないってことで結局本当に捲れにくい所以外あまり使わなかったのは絶対内緒。経費どうすんだ!くそ。まあ大人しく店の掃除に使おうと思います。
案の定でイレギュラー
そんなこんなで2日かけて捲りましたが。。。。
現場って大体そうなんですが予想外の出来事が起こるもの。
剥がして綺麗なモルタル下地が出てくると思ったらこのパテ跡。
昔の職人さん良い仕事してる。ちゃんと見えない所まで手を抜いてない!けど怒るわけにもいかない。
という訳で今度はこのパテを擦り取る作業になった訳ですが。
10分擦ってこれくらいしか落ちない。これはまずい。状況をタルトさんに説明すると。。。
忙しい仕事の合間を縫って来てくれました手伝いに来てくれました。
ここから夜な夜なパテを擦る作業をするのですが・・・。
頑固なパテは全て落とせず。どうしてもうっすら残る。
結果余りにもパテが目立つ面はペンキで塗ることになりました。
そのあたりの経緯もタルトさんのコラムで書かれています。
このあたりがこの現場のハイライトでしたね。
大盛り上がり大会。
白で良い?白が良い?
もちろん壁紙剥がしただけではなく貼ってますよ。
分かりづらいですがこんな感じで。左側です。
剥がして下地がコンクリートじゃない部分は壁紙を貼っています。
ただの白いビニールクロスに見えますが実物はただの壁紙じゃありません。
ラウファーザー/ルナファーザーって代物です。
写真では分かりづらいですがビニールではないので光沢がなくマットな質感が特徴です。
吸湿性もあるのでビニールクロスと貼った後の空気感が全く違います。
白すぎて何が何やらわかりませんが。
本来は塗装の下地用の壁紙ですが今回は塗装せずに仕上げています。今後汚れたり気分を変えたくなったらそのままペイントも出来ます。
今回はふすまにもこちらを施工しました。
気になる方はお店にありますので是非実物を触ってみてください。
うちの商品は柄物が多くて目の敵のように白い壁を悪者扱いしますのでよく誤解されるのですが、別に白が嫌いな訳じゃないんです。
タルトさんにも何度もすみませんって言われましたが誤解です。
主体性の無い貼らされた白が嫌いなだけです。住む人が「白が良い」なら白が良いのです。「白で良い」が嫌いなだけです。
よく分かりませんよね、これはまた別の機会にでも触れるとしましょう。
床はこちらもグレー過ぎて分かりにくいですが、マットなモルタルをイメージしたその名もモルタライク。
職域を少し超えて仕事をする
色々ありましたが工事自体は1週間程。
完成写真はタルトさんのサイトでいろいろな角度からの写真が載っています。
一部拝借
photo by タルト不動産/ タルトデザイン
ビフォーとの変わりようが凄まじくて同じ部屋とは思えません。
タルトさんと入居者さんの意図通り、色は白とグレーの2色でシンプルながら荒々しい雰囲気の部屋が完成。
入居者さんも満足頂いて頑張った甲斐がありました。
通常の賃貸住宅の工事では味わえない充実感。もうお腹いっぱい。
通常は管理会社さんから工事依頼のFAXとかが流れてきて「こことここの部屋をいつもの品番で貼っといて、駐車場はここ、鍵はここ」みたいな感じですよ?
仕事する方も張り合いがないですよ。このクロス誰のために貼ってんだよって。
確かにこだわると手間は掛かるし、作業も面倒なことが多い。イレギュラーもバンバン発生する。
でも誰のためにやってるかが分かるから頑張れる。
不動産屋さんだって見た目の悪いパテを擦るし(タルト不動産三宅さん)、
クロス職人だってペンキを塗るし、
壁紙屋の店長だって襖を貼る。
現場って結構やってると「これ誰の仕事?」みたいなグレーな部分が出てきます。後ろ向きな現場だと「いやいやうちの仕事じゃありません、よそに言ってください」って結構なすり合いになって現場もなかなか進まなかったりします。
ただちゃんとお客さん(入居者さん、オーナーさん、貸主さん、不動産屋さん)の顔が分かってると自分の職域を少しずつ超えてても苦にならず仕事が進んで出来る。
この人のためにってね。
結果的に現場もスムーズに進むし余計なコストも減らせてお客さんの満足を生むんだなと改めて思わされた仕事でした。
建設業界ってひとつのプロジェクトにすごく沢山の人が関わってやっと現場が完成します。
よく完成後の写真なんかは色々な所で見かけますがその影で色んな人が色んな苦労や工夫をしています。
機会があればそんな過程をまたこうやって下請けの視点から書ければ良いなと思ってます。
今回のセミオーダー賃貸、カスタマイズ賃貸は手間は確かに掛かるのですが、オーナさんからすれば先に入居者さんを見つけてしまうので実はとても合理的なんです。
どちらにしても使うお金を先に使うか後に使うかって違いです。住む人の満足度は言わずもがな。
これからこう言う取り組みが岡山でも増えるように動いていきます。
また、こんな賃貸に住みたいって人、こんな風に貸したいって言うオーナーさんや空室の対策に悩むオーナーさん、面白い取り組みをする人達が我々の周りには沢山いますのでご相談ください!
店長